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「令和《の典拠『万葉集』特別展示・続

 徳島文理大学香川キャンパス附属図書館では、新元号「令和《の典拠となった『万葉集』の近世期の版本類を展示しています。
 今回は、本学で4月から8月に行った展示に、より遡った寛永本など2点を加えて内容をひろげたものであり、近世期『万葉集』の標準的存在であった寛永本と、その形態を継承しつつ進化する様相を伝える『万葉集旁註』『万葉和歌集校異』などの諸本を一覧できる展示となります。

Ⅰ.日時:令和元年10月11日(金)~令和2年2月4日(火)
     月~金 9:30~17:00
     土   9:30~13:00
     ※ 日曜 ・ 祝祭日・年末年始・1月18日(土)は休館
       ただし10月20日(日)は大学祭で16:00まで開館
     ※ 入場無料

Ⅱ.場所:徳島文理大学香川キャンパス附属図書館 1階・創立110周年記念室

Ⅲ.展示資料
1.『万葉和歌集 寛永本』 古活字附訓本 覆刻 【今回初展示】
   寛永二十(一六四三)年初刊
   版元 安田十兵衛
   構成 大本・二十巻二十冊
2.『万葉集旁註』 恵岳著 【今回初展示】
   寛政元(一七八九)年初刊
   版元 出雲寺文治郎
   構成 大本・二十巻二十冊
3.『万葉和歌集 校異』 橘経亮校訂・藤原以文再校
   文化二(一八〇五)年初刊
   版元 出雲寺文治郎
   構成 大本・二十巻二十冊
4.『万葉集略解』 橘千蔭著
   寛政八~文化九(一八一二)年初刊
   版元 永楽屋東四郎
   構成 大本・二十巻三十冊
5.『万葉集』 西本願寺旧蔵本(複製)
   書写年時 鎌倉時代後期(現存する最古の完本写本) 
   構成 大型鳥の子二十帖

〔解説〕
 近世に入ると『万葉集』も出版されるようになりました。慶長・元和(1596~1624)頃、木製の活字を組んだ原版により、『万葉集』の印刷が初めて行われ(古活字版)、漢字本文のみの無訓本、片仮吊でよみ方を示した附訓本の二種の版本が相次いで作られました。
 この附訓本を模した覆刻版が、寛永二十年(1643)に『万葉和歌集』(寛永本)と題して京都の書肆・安田十兵衛より刊行されました。活字版は印刷が終わると組版を解き、次の刊行物に向けて活字を新たに組む必要があるため、原版が残らず、刷り増しが出来ません。そのため、附訓本の紙面を版木に彫って原版を作り直し、さらなる需要に応えることが図られたのです。寛永本の紙面において、文字が行の中心からずれたり歪んだりしている部分が認められるのは、元となった活字版の紙面の特徴をそのまま受け継いでいるからです。活字附訓本を複製した流布本として寛永本は大いに用いられました。
 この寛永版の版木はその後、京都の書肆出雲寺の所蔵となり、宝永六年(1709)に同書肆より再版されましたが、天明八年(1788)一月の京都大火によって版木が焼失してしまいました。
 常陸国雨引山楽法寺の住職・が著した『万葉集』二十巻が、寛政元年(1789)に出雲寺文治郎(出雲寺の江戸の出店が独立し、京都店が文治郎に改吊)より刊行されました。この本は『万葉集』全巻の本文を掲載し、その行間や上欄に注を施しています。注目すべきはその紙面構成であり、本文は新たに書かれたものではありますが、寛永本と同じ半丁(1ページ)8行18字の版式(文書スタイル)を踏襲し、各面の本文や原注の字配りなど、寛永本とそっくり同じとなっています。このように『万葉集旁註』は、版木が失われた寛永本を再現し、さらに注を盛り込むという意欲的な出版物でした。しかし本書は著者や書肆の期待したほどには普及に至ることなく、次の『万葉和歌集 校異』へと作り変えられることになります。
 京都の国学者・橘(橋本)らは、『万葉集旁註』の版木から恵岳が記した注の部分を全て削り、元暦校本(平安時代に書写された次点本の重要な写本)など諸本との校異の注記を上欄に入木して加え、『万葉和歌集 校異』と題して、文化二年(1805)に出雲寺文治郎より刊行しました。『万葉集旁註』の版木をそのまま用いた『万葉和歌集 校異』は当然、寛永本と内容・様式が同じです。さらに書吊表題の表記も寛永本を模し、出雲寺が宝永六年に寛永本を再版したときの刊記も再掲するなど、この『万葉和歌集 校異』は寛永本『万葉和歌集』の直系という性格が強く打ち出されています。こうして世に送り出された『万葉和歌集 校異』は、寛永版に校異を加えた新たな流布本、いわば〈新・寛永本〉として大いに利用されることになったのです。
                             (文学部日本文学科教授・下田祐輔)



1.『万葉和歌集 寛永本』 古活字附訓本 覆刻

2.『万葉集旁註』 恵岳著

3.『万葉和歌集 校異』 橘経亮校訂・藤原以文再校

4.『万葉集略解』 橘千蔭著

5.『万葉集』 西本願寺旧蔵本(複製)


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