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☆☆☆ 時空を超え、日本文学の旅に出かけよう ☆☆☆

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お勧め本(その2)


 書  名 『ボートの三人男』(中公文庫)
 著  者 ジェローム・K・ジェローム作 丸谷才一訳 
 解  説  今の日本人にはユーモアが足りない。今の日本人は悪ふざけを やっているだけだ。ユーモアとジョークを混同している。ある辞書によれば ユーモアとは「健全な人がもっている共感者を得るような人間味あふれた おかしさ」だそうだ。その本当の意味のユーモアを感じたいなら、この本を 読んでみるといい。三人の男がボートでテームズ河を下る話である。 男三人じゃむさ苦しい?河下りじゃ退屈?そんなことはありません。 あるときは詩情あふれる紀行文、あるときは抱腹絶倒の奇行文? ちょっと皮肉も混じった愉快痛快なユーモア小説です。【近藤政行】

 書  名 『図説俳句大歳時記』全五巻(角川書店)
 著  者 角川書店編 
 解  説  俳句を詠むに際して不可欠である季語を分類し、解説や例句を 付したのが「歳時記」。江戸時代から今日に至るまで、大小様々な歳時記 が編まれ、用いられている。本書はそのなかでも最も大規模なものに属し、 A4版の重厚な版型に、新年・春・夏・秋・冬の五巻に分けて、季語を集成・ 分類している。昭和39年〜40年刊。のちにB5版の縮刷版も出された。
 本書では、各季語について、その意味やイメージ、使われ方 といった解説ののちに、「考証」の項が備わり、当該季語の意義や用法の 歴史的変遷が古文献を引きながら辿られている。これが実作のみならず 古典作品の解釈や鑑賞に際して有意義で便利である。例句も多く掲げられ、 参考になる。以上の特長だけでも本書の価値は高いといえるのだが、ここで 本書を敢えてお勧めしたいのは、「図説」という点である。全頁にわたって、 季語に関する「図」が掲げられているのであるが、その大部分は、本書の 編集当時に撮影された“写真”である。つまり、本書刊行当時は「現代」で あった、昭和30年代の日本の都会や田舎の、四季折々の懐かしい生活・ 風俗を捉えた写真が、頁毎に繰り広げられるのである。 それがなんとも味わい深く、楽しい。【下田祐輔】

 書  名 『古典落語 志ん生集』(ちくま文庫)
 著  者 古今亭志ん生作 飯島友治編  
 解  説  本書は、昭和の大名人と言われた五代目古今亭志ん生の得意な 演目を、高座さながらに記録したものです。「読む落語」として、充分に 堪能できます。「火焔太鼓」のような滑稽ものから、「お直し」、「品川心中」 などの廓噺(くるわばなし)、「文七元結」のような人情噺まで様々に収め られています。志ん生は、桂文楽、三遊亭円生、柳家小さんなどと並び、 江戸落語の全盛期をつくりました。「飲む・打つ・買う」の三道楽を地で いったその生涯、十六回もの改名など自由奔放な生き方が、さながら落語 的とも言えます。同じちくま文庫に入っている、自伝『なめくじ艦隊』も読んで みましょう。
 落語を生で聞いたことはありますか? NHKドラマ「ちりとてちん」 以来、「大落語ブーム」と現在言われています。CDやDVDもたくさん出て います。本書をてはじめに、是非本物の落語に触れてみてください。話芸と よばれるものには、落語以外にも、漫才・講談・浪曲など様々あります。 人間の声には、人を引き込む独自の魅力があるようです。落語はもちろん 「笑い」の芸ですが、こうした語り物の世界は、実は文学の原点とも関わるの です。落語をきっかけにして、様々の芸能に関心を広げましょう。【中山弘明】

 書  名 『言葉とは何か』(ちくま学芸文庫)
 著  者 丸山圭三郎 
 解  説  「言葉とは何か」。この問いに対する常識的な答えは「言葉とは コミュニケーションの手段である」というものであろう。この答えは、 〈言葉が実際にどのような役割を果たしているか〉という実用的観点 から見れば、必ずしも間違いとは言えないかもしれない。しかし、 〈言葉はそもそもどのような存在か〉といういささか抽象的ではあるが 本質的な問いに対しては、何も答えていないに等しい。また、もう一つの 常識的な答えとしては、「言葉とは物や概念の呼び名である」という ものがある。言葉をこのように捉えるということは、言葉とそれが 指し示す事物との関係を、〈言葉に先立って物や概念があらかじめ 存在していて、それに名称が付けられた〉と理解することを意味する。 一見、何の問題もない常識的な理解のように思われるかもしれないが、 明らかに事実に反しているのである。本書は言語学の入門書とも 言えるが、エッセイ風で読みやすく、予備知識なしでも十分理解できる。 知っているようで知らない「言葉」の真実が満載で、目からうろこが 何枚も落ちること請け合いである。【青木毅】

 書  名 『春と修羅』
 著  者 宮沢賢治 
 解  説  「銀河鉄道の夜」や「セロひきのゴーシュ」など、子供にも 親しまれる名作で知られる宮沢賢治が生前刊行した唯一の詩集である。 この詩集のテクストの全容は賢治の全集などによって読めるが、賢治の 手による初刊本を再現した複製本(精選 名著復刻全集 近代文学館) によって読むこともできる。それには初刊本の誤植等もそのまま見られるが、 意を凝らした紙面や装幀から、この本に込めた賢治の思い入れをより間近に 感じることができる。ただし、初刊本刊行後も賢治は詩に推敲の筆を入れる ことをやめなかった。その推敲の過程は『新校本宮澤賢治全集』(筑摩書房) などで辿ることができる。
 賢治はこの書に「心象スケッチ」という語を冠し、「詩」ではないと 人に語っているなど、本書には作者の真意をめぐるさまざまな謎に満ちている。 「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電灯の/ひとつの青い照明です」 ということばで始まる「序」をはじめ、収録された作品はいずれも実験的であり、 ことばの万華鏡をのぞくような不思議な感覚に満ちるが、妹とし子の死への 慟哭を詠った「永訣の朝」などのような著名な絶唱も少なくない。本書を繰り ながら、読者はいつの間にか深遠な精神世界を旅することになるだろう。 その意味は私たち読者に投げかけられている。【下田祐輔】

 書  名 『影をなくした男』(岩波文庫)
 著  者 シャミッソー作 池内 紀訳 
 解  説  「影」といえば、子供のころ「影ふみ」という遊びをした。 鬼ごっこの一種で、じゃんけんで負けたものが鬼になり、その鬼に影を 踏まれると捕まってしまうので、影を踏まれまいと逃げ回るのである。 もう一つ影といえば「三尺下がって師の影を踏まず」という言葉がある。 今どきそんな殊勝な弟子はいないだろう。影どころか師の足を踏むような 輩がいても格別驚かないご時勢である。 さて、「影ふみ」も「師の影」も、わたしたちが影はその人そのものと 意識してきたことを示すと言えるのではないだろうか。では、影をなくすと 人はどうなるのだろう。この物語の主人公は、影を譲ってくれと言う男に、 「幸運の金袋」と引き換えに自分の影を与えてしまう。そして……。 この本を読んで影に興味を持った(たぶんそうなる)人には、河合隼雄 『影の現象学』講談社学術文庫も読んでほしい(実はこっちが本命だったり して)。心理学から影をとらえた名著です。【近藤政行】

 書  名 『直筆で読む「人間失格」』(集英社新書)
 著  者 太宰治 
 解  説  今年生誕百年を迎える太宰治の代表作は、誰が何と言っても、 『人間失格』です。今日紹介する本はなんと太宰自身の原稿による 本文構成になっているものです。一般的には各種文庫本で十分に読む ことが出来るテクストなのですが、そこはそれ、彼の自筆を見てみたい とは思いませんか?三十代で自栽してしまった天才的作家の筆跡は、 わたくしたちに一体何を問いかけようとしているのでしょうか。そんな ことを想像するだけで、ワクワクしてしまうでしょう。今回は、新しい 〈読書体験〉の在り方として自筆原稿から読むテクストを紹介いたします。 【上田穂積】

 書  名 『ジョン・ケージ著作選』(ちくま学芸文庫)
 著  者 ジョン・ケージ作 小沼純一編 
 解  説  筆者ジョン・ケージ(1912〜92)はアメリカの作曲家。 偶然性の音楽や図形楽譜、プリペアドピアノ(ピアノの内部に様々な 異物を入れて音を変換させるもの)を開発。ヨーロッパ中心の音楽観を 大きく転換した。いわゆる「現代音楽」の一つの基点。環境に開かれた 音楽を模索するなど、そのインパクトは今も色あせてはいない。
 音楽を聴いていますか?音楽とは何でしょう? こんな疑問を持ったら、変なやつだと思われるかもしれませんね。 この本の筆者はそんなことを真剣に考えた人です。音楽はメロディ・ ハーモニー・リズムからなると言われています。楽譜もそうした理念 から出来ています。ケージは、その根本に疑いの目を向けました。 例えば、雑音と音楽の境界をとりはらいました。ヨーロッパではなく、 東洋の発想にも関心を持っていました。こんなふうに言うと、気むずかしい 人物のように思うかも知れませんが、まったくそうではないのです。 ユーモアに満ちたその発想は、この本にも現れています。文字がひっくり かえったり、意味不明だったり…。ケージの不思議世界に遊ぶと、音楽の 聴き方が変わりますよ。【中山弘明】

 書  名 『日本語(上・下)』(岩波新書)
 著  者 金田一春彦 
 解  説  一般的に「日本語は特異な言語である」と考える向きがあるが、 その認識は正しいのだろうか。確かに、日本語と親戚関係に当たる 言語の存在も明らかになっておらず、日本語の系統はいまだ不明と 言わざるを得ない。ただし、日本語と直接的な系統関係にはなくとも、 類似の特徴(発音・表記・文法・語彙等のいずれかの側面において) をもつ言語の存在は、必ずしもめずらしくはない。  そもそも、本当に日本語の特徴を明らかにしようとするなら、何千語 もある世界の言語と比較する必要があるが、日本人はややもすれば、 英語を始めとする欧米の言語との比較において(必ずしも厳密な比較 ではなく)日本語論を展開しがちである。世界的視野で日本語を眺めて みると、日本語にしかない特徴を指摘するほうが難しいとも言える。  本書は、「日本語とはどのような特徴をもつ言語か」について、世界の 様々な言語と比較しつつ、多角的に論じたものである。とは言え、教科書 的な堅苦しさはなく、身近な具体例を豊富に挙げながら、日本語に関する 興味深い話題について語っている。その易しい語り口に引き込まれている うちに、自然と日本語の奥深さを学ぶことができる。【青木毅】

 書  名 『日本映画史100年』(集英社新書)
 著  者 四方田犬彦 
 解  説  日本に「活動写真」が輸入された明治時代からはじまり、 チャンバラ映画、弁士の活躍、戦時下の映画、戦後の東宝・松竹・日活 の全盛期、そして現在のインディーズの時代へと日本映画の盛衰を駆け 抜ける内容。コンパクトな日本文化史でもある。
 「映画って本当にいいものですね」。 レンタル店の普及によって、映画の見方が変わってしまいました。家で DVDを見るのも良いけれど、やっぱり巨大スクリーンの映画館も捨て がたい。ブルース・ウィルスだけじゃなくて、チャップリンも見ておか ないと。チャンバラ、怪獣、メロドラマ、アニメにポルノ。原節子、 石原裕次郎、山口百恵に北野武。スターやアイドルも「銀幕」の中から 生まれたのです。映画はその時代をいつも映し出して来ました。  この本を読んでいると、日本映画も捨てたものじゃないと思えてくる はずです。さぁ、映画館へ直行。 それでは「さよなら、さよなら、さよなら…」【中山弘明】

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